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最高裁判所第二小法廷 平成12年(行ツ)186号 判決 2000年12月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人佐伯仁、同江森民夫、同近藤正道、同馬場泰、同遠藤達雄の上告理由第一点について

地方公務員法三七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和四四年(あ)第一二七五号同五一年五月二一日大法廷判決・刑集三〇巻五号一一七八頁)とするところであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

同第二点について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、本件各争議行為の当時、地方公務員の労働基本権の制約に対する代償措置がその本来の機能を果たしていなかったということができないことは、原判示のとおりであるから、所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は採用することができない。

同第三点について

民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三一二条一項又は二項所定の場合に限られるところ、右上告理由は、理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、右各項に規定する事由に該当しない。

よって、裁判官河合伸一、同福田博の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官河合伸一、同福田博の補足意見は、次のとおりである。

私たちは、法廷意見に賛成するものであるが、なお、上告理由第二点について次のとおり付言しておきたい。

本件各争議行為の当時、地方公務員の労働基本権の制約に対する代償措置がその本来の機能を失っていたとまでいうことはできないことは、法廷意見の述べるとおりであるが、人事院勧告の凍結という事情が争議行為等の禁止違反に対する懲戒処分において懲戒権濫用の成否を判断するに当たっての重要な事情となり得ることは、最高裁平成七年(行ツ)第一三二号同一二年三月一七日第二小法廷判決・裁判集民事一九七号四六五頁の補足意見において述べたとおりである。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 河合伸一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷玄)

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